PRODISM 20260317 WEB

FEATURES

FOCUS ON CREATOR 002 永戸鉄也

2026.03.17

TEXT: ATSUO WATANABE

インディペンデントの意味を理解する上で重要視すべきことはスキルである。未熟なことをインディペンデントに置き換えるのはナンセンス。培われたスキルはセンスに帰結するのか?そんなことを感じさせる確信犯的な独自の事象、いわば“自主的な未完成”。その領域を楽しむアーティストが永戸鉄也である。

曖昧という名の愉悦

–今回は永戸さんのパーソナルな部分と2024年に始動したRAREMETAL(レアメタル)のことを中心にお伺いできればと思います。まずはレアメタルについて。こちらはどのような経緯で始まったのでしょうか?

永戸(N)「2024年末に展示会を開催したのが最初です。自分のコラージュ作品自体と、作品をプリントした洋服を置いたインスタレーションでした。レアメタルはブランドではなく、自分の創作活動の一片ということを打ち出したかったのです」

–レアメタルの特徴ってありますか?

N「自分がコラージュを作っていく過程で、マクロレンズつけた一眼レフを手元に置きながら、その製作過程でいい場所(ポイント)を見つけて撮っていくという作業を繰り返しました。それは写真作品でもあり、それ自体がデジタルコラージュの素材になっていくという。当時は“寄り”の世界に魅了されたのです」

–そんな話題性のある展示会を終えて、レアメタルの骨格がみえてきたと?

N「自分が20代から30代まで遺跡発掘の仕事やっていて、その感覚と存在量が少ない金属という意味も相まってレアメタルという言葉が浮かんできて、これを軸としてライフワークにしていこうと考えたのです。制約のない自分の創作活動を可視化するときに、別に名前をつけた方がハマるかなと思ったのです。だからレアメタルの骨格というのはすでに見えていて、僕自身ということなんです。どういうことをやっていくかという未来へのビジョンは定まっていない。そういう意味だと変化を楽しむことなのかも(笑)。展示会をやった時も普通に服を並べてオーダーをつけてもらう方法がしっくりこなくて、自分なりのやり方がわからなかった。後に『もっと曖昧にしたらいいんじゃないか』という考えが浮かんできて。服を売っているのか、作品展示をしているのか、この空間の主旨はなんなんだ?っていう。プロセスの表現というか作品未満、アパレル未満、そのぐらい余白のある(笑)活動がレアメタルの流れです。」

–とはいえ、プロダクトは制作していることも事実。過去にレアメタルが展開したプロダクトについて教えていただけますか。

N「コラージュ作品をプリントしたTシャツ、フーディーやスカーフなどがあります。特にスカーフはコットン製でプリントの再現性が非常に高いのが特徴です。コラージュの細かい部分の色味もしっかりと再現されている。コットンなので、スカーフとして巻いてもいいし、手ぬぐいのように腰に引っかけてもいい。洗い続けて、色あせてきてもそれはそれでサマになる。スカーフは継続的にリリースしたいと考えています」

–ほかにもレアメタルらしいことは?

N「昨年11月に写真家、塩田正幸くんと自分の息子と一緒に“SCUM55”という名のライブもやりました。これは自分の55歳の誕生日にちなんで開催したイベントで、他には、土b、置布という若手のバンドや渋谷の古着屋BOYのオーナーのTOMMY、A VIRGINといったメンバーにも参加してもらいました。場所も高円寺TKA4という廃墟のような場所で、好きなことを好きなメンバーで楽しむという表現がレアメタルの大切な要素になっていると思います。」

–プロダクトを作る以外の活動もレアメタルらしさだと?

N「というか自分らしさだと思います。レアメタルとは僕の創作活動の次のメタファーであって、レーベルでもないのかも。だから厳密にいえば、始まりもなければ終わりもない。やり方と気分でどうとでもなる。ゆえに予測不能だし、自分でも興味がつきない。定期的にアパレルをリリースしなかもしれないし、、。そういう曖昧さを中心に置きたい。奇をてらうわけではないのですが、年齢も相まって、いまはそういう気分です。」

–このアトリエにはまだ面白そうなものがあります。この椅子は?

N「4月にバーニーズニューヨーク六本木でポップアップを予定していて、そのために制作しているものです。古いスケートボード雑誌や映画のポスターを切ってビンテージのパイプ椅子に貼ったコラージュ作品です。」

–手元には冊子もあります。

N「これはZINEですね。いま2種類のZINEを不定期にリリースしています。ともに何冊か出しました。一つはすべて僕ひとりで制作したレアメタル名義のもの。ブックデザインはもちろん、編集、グラフィック、ショートストーリーも書いています。もう一つが“IRU BOOKS”というレーベル名で始めたZINEです。IRU(いる)は自分の会社名で、レアメタルとは対をなすというか、写真家やアーティスト、古着屋などの職業や性別、年齢、国籍を問わず、自分が気になる人と一緒にZINEを作るプロジェクトです。最近は、人と交わるときは、何かしらIRU BOOKSでの可能性を考えたりもしています。」

–今後の展望をお聞かせください。

N「簡単ですけど、創作を止めないということ。とにかく作り続ける。仕事でもプライベートでも、何かしら手を動かして進んでいく。あくまでも身の周りのリアルを感じながら。レアメタルも同じですが、即興的で曖昧なプロセスと表現の合間を揺れ動きながら創作活動を続けたい。それが展望ということで良いですかね? 」

【永戸鉄也】
1970年東京生まれ。高校を卒業後に渡米。帰国後の1996年から広告やパッケージ、ミュージックビデオなどでアートディレクターとして携わる。またコラージュや写真、映像作品が特徴で、これまでには「アンダーカバー(UNDERCOVER)」や「エビセン スケートボード(EVISEN SKATEBOARDS)」などとコラボレーションしている。2024年により自身がデザインを手がけるファッションブランド「レアメタル(RAREMETAL)」を展開。

PRODISM INFORMATION WEB